ひょっぽこ読書記録No.32 (抜粋16箇所)『国が燃える』本宮ひろ志著
『国が燃える』
本宮ひろ志 著
「忘れるな!!
国を構成する
大もとは
我々なんだ。
我々の生産だ。
国とは
俺達
そのものだ。
その国を
恐れる
必要は
ないんだ。
国を変え
俺達が
豊かになる!!
その為には
国を
恐れず
国に
俺達の
怒りを
叩きつける事だ。
叩き潰すんだ!!
いいか、
奴らだって
怖いんだぞ!!
俺達が
本気で
怒り出す事が!!
だから
怒る前に
こっちを
潰そうとする。
その事を
絶対に
忘れるな!!」
「あの人の
言ってる事は
今の
日本では
あまりに
非現実的だ。
でも
あの中に
正しい事も
いっぱいある」
「赤も
白も
関係ありません。
人間です……。
どうすれば
皆が
少しでも
良い暮らしが
できるか
です」
「いえっ……。
本当です。
生まれの
違いって
あるんですよ……。
僕の
生まれは
雑種だ……。
お父上とは
生まれついて
あまりに
考え方が
違うんです……」
「農村農民は
本来
多くの現金を
必要としない……。
それが
国家や政府
という
中央の
恩赦の下に
否応無く
現金を
要求されるに
至った……。
本来
農民は
農村で
自己完結できる。
豊かか
貧しいかは
金ではない。
……物だ」
「日本の
国土は
狭いか……?
いや
決して
狭くはない
温暖
かつ
水量の豊富さ
によって
他国と比べても
耕作可能な
土地は
極めて
広大なはずだ」
「国内において
田畑を
もっと
開発せよ
という事ですか」
「いや……
そんな事をする
必要はない……。
現状で
十分……。
あぜ道に
果樹を
植えるも
よし……。
村全体に
生い茂る
雑草は
数百頭の牛を
飼うに
十分だろう」
「豊かさとは
金ではない
……物だ。
農村においては
自己完結せよ
と言うたが……、
これはな……、
自分たちで
作った物は
すべて
自分たちで
消費してしまう
という事だ。
そして
豊かに
生活する。
その上で
自家消費を
超える
生産が
上がり出せば
これを
初めて
販売に
まわす……。
金銭経済に
支配される
農業は
空回りするんだ。
豚を飼ったら
売る必要はない。
自分たちで食う。
……好きなだけ
柿
栗を
食えばいい。
悲観する
必要はない。
天の恵みさえあれば
農村は
豊かなんだよ……」
「人間にとって
一番
大事な事は
食う事だ」
「中国人にとって
最も重い言葉。
それは
一体
何だと
思いますか?
漢字一文字だが……」
「最も重い言葉……。
わかりかねます……
すみません」
「仁ですよ……。
ならば
日本人にとっては
何だと
思いますか?
同じく
漢字一文字……。
これは
わかるだろう……」
「……」
「和です……。
大いなる和……。
大和の国
という事ですかな。
しかし
この
和
という奴は
両刃の剣
であるとも
言える……」
「人間の
営む
生活とは……
後戻りは
できんのですよ、
絶対に……
ひえを食っていた
人間が
白い米を
日常で
食い出したら
もう
ひえを
毎日
食う
生活には
戻れんのです」
「何もかも
悲観的に
考えるのは
民衆
そして
言論人の
仕事だ」
「僕は
君達がいれば
他には
何も
要らない
と言った。
しかし……、
国があり
組織がある……
男としては
やらねばならない
仕事が
そこに
生まれる……
嫌だ……
僕は
君達と
離れたくない」
「……」
「いっそ
役所を
辞めてしまおうか
と思う……」
「私達を
何より
大切に
思ってくれる
あなたの気持ち……
私は
本当に
幸せ……。
でも……
男子には
妻子以外にも
とてつもなく
大事な物が
あります」
「……」
「私と正太郎は
あなたの体の
一部よ。
あなたが
何をやろうと
私達は
あなたに
従うわ。
男の満足は
何をやって
生きて来たか
です。
私達は
あなたの体の
一部……。
私達の事は
何も
気にしないで……」
「やるなら
今年中しかない。
時間とは
やり過ごせば
簡単に
過ぎ去って
行くものだ」
「人間によって
誤った流れは
人間によって
修正できるもの
でしょうか」
「流れの中に
ある事だ。
修正したとしても
それが
また
流れになるよ。
昨日の続きが
今日であり
今日の続きが
明日という事に
なるなら
明日が決まるのは
今日
何をやるかだ。
過去から
今日までの
道のりを
変える事は
出来んだろう。
砕いて言えば
明治維新に
今日の
日本の姿がある
という事は
現実だよな。
そして
あの流れは
正しかった
と思う。
あの型の
維新なくば
日本の
健全な独立は
なかったろう」
「しかし
『富国強兵』を
スローガンにし
『士農工商』の
身分制度を
廃止し
国民すべてが
士になれば
答えは
一つ。
すべてを取るか
消滅するか
二つに一つ
これが
今の流れの中だ」
「役人ずれと
武士を
一緒に
するな」
「何が
どう
違うんですか!」
「……」
「あなたも
日本国に
生きているなら
私も
同じだ。
そして
この兵隊さんも
日本国に
生きている
同じ人間ですよ。
さっきの言葉
撤回してください!
軍人に
勘違いされては
この国にとって
迷惑です!」