ひーぶろぐ。

読書していたときに心に触れた言葉を残しています。

ひょっぽこ読書記録No.124 『言ってはいけない』橘玲 新潮新書 ー抜粋15箇所

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言ってはいけない

 残酷すぎる真実

   橘玲

     新潮新書

 

 

 

・この社会には

 綺麗事が

 溢れている。

 人間は

 平等で、

 努力は報われ、

 見た目は

 大した問題ではない

――だが、

 それらは

 絵空事だ。

 往々にして、

 努力は

 遺伝に勝てない。

 知能や

 学歴、

 年収、

 犯罪癖も

 例外でなく、

 美人とブスの

「美貌格差」は

 約3600万円だ。

 子育てや教育は

 ほぼ徒労に終わる。

 残酷すぎる真実。

 

 

・最初に

 断っておくが、

 これは

 不愉快な本だ。

 だから、

 気分よく

 1日を

 終わりたい人は

 読むのを

 やめたほうがいい。

 

 

・世界は

 本来、

 残酷で

 理不尽なものだ。

 その理由を、

 今では

 たった1文で

 説明できる。

 

 人は

 幸福になるために

 生きているけれど、

 幸福になるように

 デザインされている

 わけではない。

 

 

・私たちを

「デザイン」

 しているのは

 誰か?

 人々は

 これまで、

 それを

 神と呼んでいた。

 だが

 ダーウィンが現れて、

「神」の

 本当の名前を告げた。

 それは

 “進化”だ。

 ダーウィン

「危険な思想」は、

 100年経っても

 ほとんど

 理解されなかった。

 1930年代になって

 ようやく

 メンデルの遺伝学が

 再評価され、

 進化の仕組みが

(まがりなりにも)

 説明できるようになったが、

 不幸なことに

 ナチスによって

 誤用され、

 ユダヤ人や

 ロマ(ジプシー)、

 精神病者など

「遺伝的に劣った種」

 の絶滅を

 正当化する

 優生学になった。

 悲惨な戦争が

 終わると、

「進化論は

 自然や

 生き物の不思議を

 研究する学問で、

 知性を持つ

 人間は別だ」

 という

 “人間中心主義

ヒューマニズム)”が

 政治的に

 正しい態度と

 されるようになった。

 だが

 1950年代に

 ワトソンとクリックが

 DNAの二重らせんを

 発見し、

 生命の神秘の謎を

 解く鍵を

 手に入れたことで、

 ダーウィンの進化論は

 大きく

 バージョンアップした。

 動物行動学

(エソロジー)は、

 チンパンジーなど

 霊長類の観察を

 通して、

 ヒトの生態の多くが

 動物たちと

 共通しており、

 私たちが

「特別な種」

 ではないことを

 説得力をもって

 示した。

 こうして

 進化生物学・進化心理学

 誕生した。

「現代の進化論」は、

 こう主張した。

 

 身体だけでなく、

 人の心も

 進化によって

 デザインされた。

 

 だとしたら

 私たちの

 喜びや

 悲しみ、

 愛情や

 憎しみは

 もちろん、

 世の中で起きている

 あらゆる出来事が

 進化の枠組みの中で

 理解できるはずだ。

 このようにして

 現代の進化論は、

 コンピュータなど

 テクノロジー

 急速な発展に支えられ、

 分子遺伝学、

 脳科学

 ゲーム理論

 複雑系などの

「新しい知」

 と融合して、

 人文科学・社会科学を

 根底から

 書き換えようとしている。

 

 

・現代の精神医学では、

 犯罪を引き起こすような

 精神障害

「反社会性パーソナリティ障害」

 と呼ばれている。

 とはいえ、

 ずる賢い人や

 残酷な人間は

 どんな社会にも

 一定数いるし、

 これを

 安易に

 治療の必要な

「病気」

 にしてしまうと、

 刑法における

 責任能力との関係で

 厄介な問題が

 出てくるから、

 どこからを

「障害」

 と見なすかは

 曖昧にならざるを得ない。

 だが

 それでも、

 誰が見ても

「異常」な人間は

 いる。

 イギリスで、

 1994年から

 3年間に生まれた

 5000組の

 双子の子供たちを

 対象に、

 反社会的な傾向の

 遺伝率調査が

 行われた。

 それによると、

「冷淡で無表情」

 といった性格を

 持つ子供の遺伝率は

 30%で、

 残りの70%は

 環境の影響だとされた。

 この

「環境」には

 当然、

 子育ても

 含まれるだろうから、

 これは

 常識的な結果だ。

 次いで

 研究者は、

 教師などから

「矯正不可能」

 と評された、

 極めて高い

 反社会性を持つ

 子供だけを

 抽出してみた。

 その結果は、

 衝撃的なものだった。

 犯罪心理学

 サイコパス

 分類されるような

 子供の場合、

 その遺伝率は

 81%で、

 環境の影響は

 2割弱しかなかった。

 しかも

 その環境は、

 子育てではなく

 友達関係のような

「非共有環境」

 の影響とされた。

 この結果が

 正しいとすれば、

 子供の

 極端な

 異常行動に対して

 親ができることは

 ほとんどない。

 親の

「責任」とは、

 たまたま

 その遺伝子を

 自分が持っており、

 それを

 子供に伝えた

 ということだけだ。

 

 

・私たちは、

 運動能力や

 音楽的才能に

 人種間の違いがあることを

 ごく普通に

 受け入れている。

――「黒人の

 並外れた身体能力」

 とか、

「天性の

 リズム感」

 とか。

 アフリカには

 多様な民族が

 暮らしており、

 適性も

 様々だろうが、

 スポーツや音楽を

 語る時に

 肌の色で

「黒人」

 という人種に

 ひとまとめにすることが

 問題とされることはない。

 

 

・それに対して

 知能の格差は

 差別に直結し、

 政治的な問題となって

 激しい論争を生む。

 何故なら

 私たちが暮らす

「知識社会」が、

 人の

 様々な能力の中で

 知的能力

(言語運用能力と

 論理数学的能力)に

 特権的な価値を

 与えているからだ。

――政治家や弁護士は

 言語的知能が高く、

 医者や科学者は

 論理数学的知能が高い。

 逆に

 IQが低いと

 経済的に

 成功できず、

 社会の落伍者に

 なってしまう……。

 こうした現実から、

潜在的な知能は

 人種に関わらず

 均質でなければならない」

 という

 イデオロギー的な要請が

 生まれる。

 しかし、

 これは

 極めて危うい論理では

 ないだろうか。

「人権と知能は無関係」

 という前提で

 社会の仕組みが

 成り立っているとすると、

 将来、

 研究が進んで

 その前提が否定されれば

 大混乱に陥ってしまう。

 知能が

 遺伝の強い影響を

 受けている

 という

 行動遺伝学の知見を

 認めた上で、

 個人の人権を

 平等に扱い、

 効果的な再分配や

 社会福祉を設計したほうが

 ずっと現実的だろう。

 しかし

 これは、

 それほど簡単なことではない。

 それは

 私たちの社会が、

「知能の呪縛」に

 あまりにも強く

 とらわれているからだ。

 

 

・スーパーZIPに住む

 新上流階級は

 マクドナルドのような

 ファーストフード店には

 近づかず、

 アルコールは

 ワインかクラフトビール

 煙草は吸わない。

 アメリカでも

 新聞の購読者は

 減っているが、

 新上流階級は

 ニューヨーク・タイムズ

(リベラル派)や

 ウォール・ストリート・ジャーナル

(保守派)に

 毎朝

 目を通し、

『ニューヨーカー』や

エコノミスト』、

 場合によっては

ローリングストーン』などの

 雑誌を

 定期購読している。

 また

 彼らは、

 基本的に

 あまりテレビを観ず、

 人気ランキング

 上位に入るような

 トークラジオ

(リスナーと

 電話でのトーク

 中心にした番組)も

 聴かない。

 休日の昼から

 カウチで

 スポーツ番組を観て

 過ごすようなことはせず、

 休暇は

 ラスベガスか

 ディズニーワールドではなく、

 バックパックを背負って

 カナダや中米の

 大自然の中で

 過ごす。

 マレーは、

 これが

 新上流階級が

 スーパーZIPに集住する

 理由だという。

 彼らの趣味嗜好は

 一般のアメリカ人と

 まったく異なっているので、

 一緒にいても

 話が合わない。

「自分に似た人」

 と結婚したり、

 隣人になったほうが

 ずっと楽しいのだ。

 

 

①生まれた赤ん坊が

 その日に殺される確率は、

 他の日より

 100倍高い。

②殺された赤ん坊の

 95%は

 病院で生まれていない。

③イギリスでは、

 継親

 育てられている幼児は

 1%に過ぎないのに、

 赤ん坊殺しの

 53%は

 継親の手による。

アメリカでも、

 継親の虐待の結果、

 子供が死ぬ可能性は

 実の親に比べて

 100倍ののぼる。

⑤実の親に比べ、

 継親

 2歳未満の継子を

 6倍の割合で

 虐待する。

 

 いずれも

 陰惨な数字だが、

 今では

 何故

 こんなことが

 起きるのか、

 一貫した論理で

 説明できる。

 それは

 現代の

 生物学や心理学が、

 身体的特徴だけでなく、

 心や感情も

 進化の産物だと

 みなすように

 なったからだ。

 

 

・犯罪には、

 あらゆる時代、

 あらゆる社会で

 顕著に観察される

 遺伝的・生物学的

 基盤がある。

 それは

 性差で、

 女性に比べて

 男性のほうが

 はるかに

 暴力的・攻撃的なのは

 明らかだ。

 アメリカを例にとれば、

 男性の殺人は

 女性の

 約9倍、

 強盗は

 10倍、

 重度の傷害は

 6.5倍で、

 暴力犯罪全体では

 8倍近い。

 暴力を伴わない犯罪でも

 詐欺が

 女性の

 13.5倍、

 自動車の窃盗が

 9倍、

 放火が

 7倍、

 麻薬常習が

 5倍、

 子供や家族への違法行為が

 4.5倍

 となっている。

 女性の違法行為が

 男性を上回るのは

 未成年者の家出と

 商業売春だけだ。

 こうした犯罪傾向は

 日本も同じで、

 男性の殺人は

 女性の

 3倍、

 強盗は

 15倍、

 傷害が

 12.5倍、

 暴行が

 10.5倍

 などとなっている。

 

 何故

 このようなことに

 なるのだろうか。

 進化生物学は

 これを

 次のように

 説明する。

 女性は

 生涯に産める

 子供の数に

 上限があるから

 卵子

 極めて貴重で、

 相手の男性を

 強く

 選り好みするように

 進化した。

 それに対して

 男性は

 精子の生産コストが低く、

 機会さえあれば

 何人でも

 子供をつくることが

 できる

――これが、

 時代と場所を問わず

 権力を握った男が

 ハーレムをつくろうとする

 理由だ。

 こうした状況では、

 男性は

 女性をめぐって

 競争するよう

 進化してきたはずだ。

 思春期になると

 男性ホルモンである

 テストステロンの濃度が

 急激に上昇し、

 女性獲得競争に備えて

 冒険的・暴力的になるのは

 霊長類をはじめ

 両性生殖の

 多くの動物に

 共通している。

 進化が

 自らの遺伝子の複製を

 最大化するよう

 強い圧力を

 かけているとすれば、

 思春期の男は

 女性とセックスするのに

 手段を選ばなくなるだろう。

 一夫多妻の社会では、

 女性は

 地位の高い

 高齢の男性に

 独占されている。

 それに挑戦し、

 戦いを挑む

 蛮勇を持った

 個体だけが、

 後世に

 遺伝子を

 伝えることが

 できた。

 そう考えれば、

 若い男性の

 犯罪率や事故率が

 極めて高く、

 年をとるにつれて

「まるくなっていく」のが

 進化の必然であることが

 わかる。

 

 

・攻撃的で

 支配的な

 ウサギは、

 おとなしく

 従属的な

 個体に比べて

 安静時

 心拍数が低い。

 さらに、

 ウサギの支配関係を

 実験的に操作すると、

 支配力(群れの中での地位)が

 上がるにつれて

 心拍数が下がる。

 これと同じ相関関係は

 ボノボチンパンジー類)、

 マカク(オナガザル科)、

 ツパイ(リスに似た哺乳類)、

 マウスなど

 動物界で

 広範に見られる。

 では、

 人間では

 どうだろうか。

 神経犯罪学者

 エイドリアン・レインは

 イギリスの大学で

 研究していた時、

 反社会的な学生の

 安静時心拍数が低いことに

 興味を抱いた。

 これが

 偶然かどうかを知るために

 40本の論文

(被験者の子供の

 総数5868人)を

 調べたところ、

 安静時心拍数は

 反社会的な行動に関する

 被験者間の差異の

 およそ5%を

 説明した。

 これは

 医学的には、

 喫煙と肺がん発症との

 関係よりも

 はるかに強い。

 次に

 レインは、

 ストレス時の心拍数も

 調べてみた。

 これは

「1000から逆向きに

 7つ置きで数える」

 というような

 課題を与えられた時の

 心拍数だ。

 ストレス時心拍数は、

 反社会的行動に関する

 変動の

 12%を

 説明した。

 これは

 家庭用妊娠テストキットの

 正確さや

 不眠を改善する睡眠薬

 効果などに

 匹敵する。

 心拍数の性差は

 早くも

 3歳の時点で

 見られ、

 男子の心拍数は

 女子より

 1分間に

 6.1回少ない。

 男性の犯罪者は

 女性より

 はるかに多いが、

 この

 心拍数の性差は、

 反社会的行動の性差が

 現れ始める前に

 出現する。

 幼少時に測定した

 心拍数が、

 成人後の

 反社会的行動

 結びつくことを示す

 経年研究も

 行われている。

 イギリス、

 ニュージーランドなどで

 実施された

 5件の

 経年研究によれば、

 子供の頃

(早くは3歳の時点)の

 心拍数の低さが

 後年の

 非行、

 暴力、

 犯罪の

 予測因子になることが

 示された。

 もちろん、

 反社会的な子供の

 すべてが

 心拍数が低いわけではない。

 そこで

 レインは、

 15歳の時に

 反社会的な態度をとっていて、

 29歳までに

 犯罪者になった者と、

 成人後に

 反社会的にも犯罪者にも

 ならなかった者とを

 比較してみた。

 その結果、

 犯罪者にならなかった

 グループは、

 犯罪者になった

 グループに比べて

 安静時心拍数が

 かなり高いことが

 判明した。

 心拍数の高い子供は、

 非行に走ったとしても

 大人になれば

 更生するのだ。

 

 心拍数の低さと

 反社会的、攻撃的な行動は

 何故

 相関するのだろうか。

 これについては

 いくつかの説明が

 提示されている。

 ひとつは

 恐怖心のなさ。

「安静時」とはいえ、

 被験者の子供は

 不慣れな環境で、

 見知らぬ大人の

 監督のもと、

 電極をとりつけられて

 心拍数を

 計測されるのだから、

 軽いストレスを

 受けている。

 そのような状況では、

 臆病で

 不安を感じやすい

 子供の心拍数は

 上がるだろう。

 心拍数の低さは、

 恐れの欠如を

 反映しているのだ。

 このことは、

 爆発物解体の専門家の

 心拍数が

 とりわけ低いという

 事実とも

 合致する。

 彼らは

 一般の人より

 恐怖を感じる

 度合いが低く、

 それを

 有効に使って

 社会に貢献しているのだ。

 2つ目の説明は、

 心拍数の低い子供は

 高い子供より

 共感力が低い

 というもの。

 共感力を欠く子供は

 他人の立場に

 身を置くことが

 できず、

 いじめられたり

 殴られたりすると

 どんな気分になるか

 想像できない。

 同様に、

 共感力の低い成人は

 他人の感情に

 無関心で、

 反社会的・攻撃的に

 なりやすいのかも

 しれない。

 3つ目の説明は

 刺激の追及だ。

 覚醒度の低さが

 不快な生理的状況を

 もたらし、

 それを

 最適なレベルに

 上げるために

 刺激を求めて

 反社会的行動

 走る。

 この仮説では、

 人には

 それぞれ

 快適

 かつ

 最適な

 覚醒度があると

 考える。

 心拍数が低いと

 容易に

 その覚醒度に

 到達できず、

 誰かを殴る、

 万引きする、

 麻薬に手を染める、

 などの方法で

 刺激を

 高めようとするのだ。

 もちろん、

 こうした

 とってつけたような

 説明を

 胡散臭く感じる人も

 いるはずだ。

 だが

「心拍数で

 将来の犯罪を

 予測できる」

 という仮説が、

 大規模な実証実験によって

 証明されている

 としたら

 どうだろう。

 

 

モーリシャス

 大規模実験では、

 3歳児が

 不快な刺激に

 どのように

 反応するかが、

 皮膚コンダクタンス

(きわめて微弱な電流を

 流した時の発汗量)

 によって

 計測された。

 ヘッドフォンを通して

 まず

 低音が与えられてから

 10秒後に

 不快な騒音が

 流される。

 これを

 数回

 繰り返しただけで、

 パブロフの犬同様、

 3歳児は

 低音が流されると同時に

 発汗するようになる。

 この実験から

 20年が経ち、

 被験者が

 23歳になったとき、

 研究者たちは

 島内の

 すべての裁判記録から、

 どの子供が

 成人後に

 犯罪者になったかを

 調査した。

 1795人の

 被験者のうち

 137人が

 有罪判決を

 受けていたが、

 彼らは

(犯罪と無関係の)

 正常対照群に比べて、

 3歳時点の

 恐怖条件づけで

 際立った

 違いがあった。

 一般の子供は、

 不愉快な音を予告する

 低音を聞くと、

 発汗量が増加する。

 ところが

 将来

 犯罪者になる

 被験者には、

 この反応が

 まったく

 見られなかったのだ。

 

 この発見は、

 幼少期における

 自律神経系の

 恐怖条件づけ機能の

 障害が、

 成人犯罪を導く

 因子として

 作用し得ることを

 示唆している。

「発汗しない子供」は、

 親が

 どれほど厳しく

 しつけても、

 良心を学習することが

 できないのだ。

 

 だが

 神経犯罪学者の

 レインは、

 ここで

 さらに

 予想もない実験を

 考えつく。

 彼は、

 刑務所に

 収監されていない

「賢い

(上首尾な)

 サイコパス」の

 心拍数と

 皮膚コンダクタンス反応を

 測ろうとしたのだ。

 そもそも、

 警察に捕まっていない

 サイコパス

 どのように

 見つければ

 いいのだろうか。

 レインは、

 彼らが

 集まっている場所は

 どこかを

 考えた。

 それは

 臨時職業紹介所だ。

「賢いサイコパス」は

 犯罪者であることを

 知られずに

 社会に

 紛れ込んでいるのだから、

 普通の人たちと一緒に

 働いているはずだ。

 だが

 彼らは

 刺激を求めており、

 退屈な会社勤めを

 長く続けることが

 できないだろうし、

 一見

 人当たりが良くても、

 いずれ

 その正体が

 周囲に

 知られることになる。

 その結果、

 彼らは

 頻繁に

 転職を繰り返すことになり、

 その間、

 職業紹介所に

 一時的に

 滞留するのだ。

 そこで

 レインは、

 職業紹介所で

 心理学実験の

 協力者を募り、

 集まった被験者に

「最近

 どんな罪を

 犯したのか?」

 と質問してみた。

 彼らが

「賢いサイコパス」なら、

 そんなことを

 正直に喋るはずがない

 と思うだろう。

 だが

 案に相違して、

 多くの被験者が

 自分の

「犯罪体験」を

 喜々として

 話し出したのだ。

 理由のひとつは、

 レインたちの研究が

 アメリカ厚生省長官から

 機密保持の認証を

 受けていたことにある。

 インタビュー前に

 被験者は、

 どんな秘密を

 打ち明けても

 不利益にはならないと

 説明される。

 だが

 それ以上に

 決定的なのは、

 彼らが

 自分の体験を

 誰かに

 話したがっていたことだ。

 彼ら

「賢いサイコパス」は、

 レイプや殺人を含め、

 自分の犯した

 悪事について、

 生まれて初めて

 思う存分語る

 機会を得たのだ。

 

 一般集団における

 男性の

 反社会性パーソナリティ障害の

 基準率は3%だが、

 職業紹介所で募集した

 被験者は

 基準率24.1%という

 驚異的な値が得られた。

 彼らのうち

 43%にはレイプの

 53%に傷害の

 経験があり、

 29%は武装強盗、

 38%は他人への発砲、

 そして

 29%は

 殺人未遂もしくは殺人を

 犯していた。

(すべてを足すと

 100%を

 大きく超えるのは、

 これら複数の犯罪に

 手を染めているからだ)

 それなのに

 彼らの多くは、

 これまで

 一度も

 警察の調査対象に

 なったことが

 ないのだ。

 こうしてレインは、

 社会に潜む

「賢いサイコパス」の

 サンプルを

 手に入れた。

 次に

 このサンプルと、

 刑務所に収監されている

「愚かな

(不首尾な)

 サイコパス」、

 および

 犯罪とは無縁の

 一般の人

(正常対照群)とを

 比較してみた。

 ストレスに対する

 皮膚コンダクタンス反応では、

「愚かなサイコパス」は

 理論が予想する通り、

 発汗のない

 低い値しか

 示さなかった。

(良心を学習する

 能力がなかった)

 だが

「賢いサイコパス」は

 正常対照群と同様に、

 ストレスによって

 発汗率が上昇した。

 すなわち

 彼らは、

 普通の人と同じ

 自律神経系の

 素早い反応を

 持っていた。

 次に

 レインは、

 計画、

 注意、

 認知の柔軟性など

「実行機能」を

 測定してみた。

 これは

 企業経営者として

 成功するための

 必須の能力で、

「愚かなサイコパス」は

 正常対照群に比べて

 この能力が

 著しく

 劣っていた。

 だが

「賢いサイコパス」は、

「愚かなサイコパス」は

 もちろん、

 一般の人を上回る

 高い実行能力を

 持っていたのだ。

「賢いサイコパス」は、

 恐怖条件づけで

 良心を学習することも

 できたはずだし、

 企業経営者にも劣らない

 高い能力も

 持っていた。

 では

 何故、

 彼らは

 犯罪の道を

 選んだのだろうか。

 これについて

 レインは

 2点

 指摘している。

 ひとつは、

「賢いサイコパス」には

 養子に出されたり、

 孤児院などの施設で

 育てられた

 ケースが多かったこと。

 実の両親との

 結びつきが

 弱かったために、

 親密な社会関係を

 形成する機会を

 逃したと

 考えられる。

 そして

 もうひとつの

 明確な要因が、

 心拍数の低さだ。

「賢いサイコパス」の

 安静時心拍数は、

「愚かなサイコパス

 同様に

 明らかに

 低かった。

 だが

 大きな違いは、

 ストレスを与えられると

 正常対照群と同じ値まで

 一気に

 心拍数が

 上がることだ。

 この刺激が

 快感になるなら、

「賢いサイコパス」は

 心拍数を

 急上昇させるような

 体験を

 何度も

 求めるだろう。

 もちろん

 ここで述べたことは

 すべて

 仮説の域を出ず、

 研究も

 緒についたばかりだ。

 心拍数のような

 単純な生理現象が

 犯罪を生むというのは

 衝撃的だが、

 しかし

 考えてみれば、

 すべての

 感覚的・生理的刺激は

 脳で処理されるのだから、

 そこから

 固有の

 性格や嗜好が

 生じたとしても

 不思議はないのかもしれない。

 

 

・愛情と思いやりに

 満ちた

 裕福な家庭で

 育てられた

 ダニーは、

 早くも

 3歳の頃には

 手のつけられない

 問題児だった。

 ものを盗み、

 巧みな嘘をつき、

 10歳で

 麻薬の売買に

 手を出した。

 成長して

 たくましくなると

 車を盗み、

 麻薬の取引のために

 母親から

 宝石を騙し取り、

 15歳の時には

 少年院に

 18カ月

 拘置された。

 藁にもすがりたい思いの

 両親は、

 少年院を出た

 ダニーを

「脳を変える」

 という

 あやしげな診療所に

 連れて行った。

 最初の検査では、

 前頭前皮質

 過度に遅い

 脳波の活動が

 検出された。

 これは

 覚醒度の低さの

 典型的な徴候だ。

 

 診療所は

 ダニーに

 電極が装着された

 帽子をかぶせ、

 パックマンなどの

 ビデオゲーム

 やらせた。

 これで

 集中力を維持し、

 覚醒度の低い

 未熟な皮質を

 鍛錬するというのだ。

 ほとんどの人は

 これを

 馬鹿馬鹿しいと

 思うに違いない。

 札付きの不良が

 パックマン

 やったからといって、

 いったい

 何が変わるというのか。

 だが、

 その効果は

 劇的なものだった。

 1年間のセッションで、

 ダニーは

 通信簿にFが並ぶ

 非行少年から

 オールAの

 優秀な生徒に

 変貌したのだ。

 治療が完了した後、

 ダニーは

 次のように

 過去の自分を

 述懐している。

「学校は

 まったく

 面白くなかったけど、

 犯罪には

 本当に

 興奮した。

 とにかく、

 警官を出し抜いて

 派手に

 暴れ回りたかった。

 それが

 イカすことだと

 思っていたんだ」

 犯罪と心拍数の関係で

 わかるように、

 脳は

 家庭や学校のような

 外的な環境よりも

 むしろ

 体内の生理的な刺激から

 強い影響を受ける。

 覚醒度の低い子供は

 無意識のうちに

 より強い

 刺激を求め、

 それが

 犯罪を

 誘発するのだ。

 

 

・レインの描く

 近未来では、

 ロンブローゾ・プログラムの

 成功を受けて、

 政府は

 次に

「全国子供選別プログラム」を

 開始する。

 これは

 10歳の子供全員を対象に、

 生理機能、

 心理、

 社会関係、

 行動の

 評価を行い、

 それを

 幼少期のデータと

 統合しながら

 分析することで、

 将来の犯罪を

 予測しようと

 するものだ。

 このプログラムが

 洗練されてくれば、

 親は、

「あなたの長男が

 成人後に

 暴力犯罪者になる可能性は

 48%、

 殺人を犯す可能性は

 14%」

 などという報告を

 受けることになる。

 もちろん、

 まだ

 何の罪も犯していない

 子供を

 強制的に

 施設に収容することなど

 できない。

 しかし

 危険因子のある

 子供を持つ

 親には、

 2年間、

 親元を離れて

 集中的な

 バイオソーシャル・セラピーを

 受けさせる

 選択肢が

 与えられる。

 このセラピーによって、

 子供が

 成人後に

 犯罪者になる確率を

 有意に

 引き下げることが

 できる。

 犯罪の

 生物的基礎を

 考えるならば、

 10歳の時に

 矯正を始めても

 効果に限界がある。

 そこで

 政府は、

 遺伝的な問題や

 乳幼児期の家庭環境に

 対処するため、

「子供を産むには

 まず

 免許を

 取得しなければ

 ならない」

 という

 法律を

 つくるかもしれない。

 自動車は

 社会にとって

 有益だが、

 同時に

 危険でもあるので、

 車の運転には

 免許の取得が

 義務づけられている。

 それと

 同様に、

 新しいメンバーは

 社会にとって

 必要だが、

 同時に

 市民社会に対する

 脅威にも

 なりかねないのだから、

「親の免許制」

 の発想が

 出てくるのは

 当然なのだ。

 親の免許制は、

「親の良き行動は、

 子の良き行動を

 導く」

 をスローガンに、

 子供の

 人権と保護を

 何よりも優先する。

 免許の取得にあたっては、

 男女は

 妊娠前に

 養育に関する

 基本知識を習得する

 必要がある。

 それは

 生殖機能の仕組みから

 始まって、

 胎児期の栄養補給、

 ストレスの除去、

 乳児の欲求、

 成長期の子供に対する

 しつけやサポートの仕方、

 ティーンエイジャーとの

 接し方などで、

 その最終目標は

 責任ある市民に

 なることだ。

 免許制によって

 親への教育が

 徹底されれば、

 煙草やアルコールによる

 体内環境の汚染で

 脳に

 器質的な障害が

 生じるような

 不幸な事例を

 防ぐことも

 できるだろう。

 親の免許制では、

 試験を通って

 免許を取得しなければ

 出産が許されない。

 これは

 当然、

 学習障害を持つ人たちへの

 差別として

 大きな問題になるだろう。

 だが

 それでも、

「安全な社会」

 を求める人々の

 要求のほうが

 強ければ、

 将来、

 このような制度が

 導入されたとしても

 不思議はない。

 

 

・ほとんどの人が

 容姿を

 女性にとって

 より重要な問題だと

 考えるだろうから、

 ここまでは

 意図的に

 女性の美貌格差を

 紹介してきた。

 だが

 ハマーメッシュは、

 女性よりも

 男性のほうが

 美貌格差が大きいことを

 発見した。

――といっても、

 これは

 少し

 説明が必要だ。

 まず、

 美形の男性は

 並みの容姿の男性より

 4%

 収入が多い。

 女性の場合、

 美貌のプレミアムは

 8%だから

 その半分で、

 男性は

 イケメンでも

 経済効果は

 それほど

 期待できない。

 これは

 常識の範囲内だろう。

 

 驚くのは

 容姿の劣る

 男性の場合で、

 平均的な男性に比べると

 なんと

 13%も

 収入が少ないのだ。

 女性の場合は

 4%だから、

 醜さへのペナルティは

 3倍以上にもなる。

 何故

 これほどまでに

 男性は

 容姿で

 差別されるのだろうか。

 

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