ひーぶろぐ。

読書していたときに心に触れた言葉を残しています。

ひょっぽこ読書記録No.96 『幸福の資本論』橘玲 ダイヤモンド社 ー抜粋14箇所

 

にほんブログ村 本ブログ 本・読書情報へ
にほんブログ村

 

『幸福の「資本」論』

 あなたの未来を決める

 「3つの資本」と

 「8つの人生パターン」

   橘玲 著

    ダイヤモンド社

 

 

 

・今の時代の

 日本に生まれた

 ということが

 最大の幸運である。

 

 

「知識人」を

 自称する人たちは、

「資本主義が終焉して

 経済的大混乱が

 やってくる」とか、

「社会が右傾化して

 また

 戦争に

 巻き込まれる」とかの

 不吉な予言を

 ばら撒いています。

 しかし

 過去100年間を

 時系列で眺めれば、

 私たちが

 暮らす社会が

 ずっと

 安全になり、

 人びとが

 豊かになったことは

 あらゆる指標から

 明らかです。

 そして

 これは、

 時間軸を

 300年、

 500年、

 1000年、

 あるいは

 1万年に延ばしても

 同じです。

 かつての

 日本社会は、

 ごく一部の

 特権層しか

 豊かさを

 手にすることが

 できませんでした。

 しかし

 現在では、

 より多くの人が

幸福の条件」に

 アクセスできます。

 江戸時代であれば、

 あるいは

 明治や昭和初期であっても、

「平民」が

 幸福について

 語るなど

 考えられなかったでしょう。

 だったら

 なぜ、

三丁目の夕日」が

 理想化されるの

 でしょうか。

 多くの社会学者が

 指摘するように

 “憧れの昭和30年代”は、

 豊かさでも

 犯罪率でも、

 男女差別や

 身分差別でも、

 あらゆる指標で

 現在より

 はるかに

 暮らしにくい

 社会でした。

 その

 “嫌な時代”を

 高度経済成長後に

 振り返ると、

「若々しく

 希望に

 溢れていた」ように

 錯覚するのです。

 

 

・ひとは

 事故や

 犯罪、

 戦争や

 天変地異など

 ネガティブな

 出来事に

 強く

 引きつけられます。

 悲惨な事故が

 起きると

 マスメディアは

 大々的に

 報じますが、

「危機一髪で

 事故を防いだ」

 という話は

 ニュースには

 なりません。

 これは

 メディアが

 偏向しているから

 ではなく、

 視聴者が

 何の興味も

 持たないからです。

 私たちが

 生得的・遺伝的に

 強い

 ネガティブバイアスを

 持っている

 理由は、

 凶暴な

 肉食獣が

 うようよする

 旧石器時代

 サバンナで、

 のんびり

 日向ぼっこをするのと、

 いつも

 びくびくして

 周囲を窺うのとで、

 どちらが

 より多く

 子孫を残すことが

 できたかを

 考えれば

 すぐに

 わかるでしょう。

 私たちは

 皆、

 “臆病者”の子孫であり、

 メディアは

 この

 ネガティブバイアスを

 利用して、

 陰惨な事件が

 毎日

 起こっているかのように

 触れ回っているのです。

 

 

・冷静に

 歴史を振り返れば、

「経済的成功への機会」

 という意味で、

 現在の日本が

 過去の

 どの時代よりも

 恵まれていることは

 間違いありません。

 すなわち

 私たちは、

 今の時代の日本に

 生まれてきている

 というだけで、

 とてつもない

 幸運に

 恵まれているのです。

 だとしたら

 考えるべきは、

 この

「奇跡」と「幸運」を

 活かし、

 どのように

「幸福な人生」を

 つくりあげていくか

 でしょう。

 

 

・ひとは

 幸福になるために

 生きているけれど、

 幸福になるように

 デザインされている

 わけではない。

 

 

・私たちを

「デザイン」したものは

 長い間

「神」

 と呼ばれてきましたが、

 今では

 その神の名が

「進化」

 であることが

 わかっています。

 生命誕生以来の

 長い進化の歴史は、

 ヒトの

 身体だけでなく

 こころをも

 つくってきました。

 私たちが

 笑ったり、

 泣いたり、

 恋をしたり、

 絶望したりするのも、

 すべて

 進化のプログラムとして

 理解することが

 可能です。

 そして

 そのプログラム

 =遺伝子の目的は、

 宿主である

 私たちを

 幸せにすること

 ではなく、

 ただ

 ひたすら

 自らの複製を

 増殖させることです。

 遺伝子に

 組み込まれた

 プログラムは

 強力ですが、

 環境に合わせて

 素早く変化する

 能力を

 持っていません。

 これが

「ひとは

 原始人の

 こころを

 もって

 アスファルトジャングルを

 いきている」

 といわれる

 由縁で、

 人生の

 様々な困難も、

 世界の

 あちこちで

 起きている

 悲惨な出来事も、

 その大半は

 遺伝子のプログラムと

 現代の価値観が

 整合的でないことが

 理由です。

 しかし、

 こうした

 困難を

 前提としても

 なお、

「幸福な人生」を

 実現する

 戦略は

 可能です。

 それは

 私たちが暮らす

 世界が

 十分に

 豊かで、

 高度なテクノロジー

 溢れているからです。

 人類は

 今、

 そのアドバンテージを

 使って、

 進化が課す

 厳しい制約を

 乗り越えようと

 しています。

 

 

・空は

 抜けるように

 青く、

 風は

 わずかに

 湿っていた。

 船外機の轟音が

 止むと、

 あたりは 

 静寂に包まれた。

 はやくも

 白いヴェールで

 覆われ始めた

 太陽が、

 うんざりするほど

 暑い午後を

 約束していた。

 見渡す限り

 土色の湖面が

 広がり、

 遠くに

 釣り船が

 何艘か

 見える。

 私は

 とてつもなく

 広い湖の

 真ん中で、

 カンボジア人の

 若者と二人、

 取り残されていた。

 トンレサップ湖

 東南アジア最大の湖で、

 アンコールワット

 知られる

 シュムレアップから

 湖畔までは

 車で

 1時間ほどだ。

 もっとも

 私は、

 ガイドの説明を

 聞くまで、

 その

 だだっ広い

 水面が

 海だと

 信じ込んでいた。

 いきあたりばったりの

 旅で

 カンボジア

 訪れ、

 観光ガイドに

 早変わりした

 タクシー運転手に

 船着場まで

 運ばれ、

 暇を持て余していた

 観光船に

 乗せられたのだ。

 今年で

 23歳になる

 という

 日に焼けた

 若者は

 操舵手兼ガイドで、

 船を停めると、

 たどたどしい

 英語で

 湖の伝説を

 語り始めた。

 だが

 私は、

 美しい

 踊り子の

 数奇な運命よりも

 はるかに

 奇妙な

 湖上の光景に

 目を奪われていた。

 どこから

 現れたのか、

 上半身裸の

 子どもたちが

 金盥に乗って、

 一寸法師よろしく

 1本の櫂を

 器用に操りながら

 こちらに

 向かってくるのだ。

 最初に

 船に

 辿り着いたのは、

 5歳ぐらいの

 痩せた

 男の子だった。

 船べりにいる

 私の横に

 金盥を寄せると、

 彼は

 骨ばった腕を

 思い切り

 伸ばして

 叫んだ。

「ギブ・ミー・マネー!」

 やがて

 私のまわりには

 金盥が集まり、

 男の子も

 女の子も

 両手を広げ、

 船を揺すり、

「ギブ・ミー・マネー!」

 と声を張り上げた。

 ガイドの

 若者は

 その様子を

 黙って

 眺めていたが、

 わずかに

 肩をすくめると、

 困惑している

 私に

 向かっていった。

「この子たちは、

 ベトナム人なんです」

 それから、

 この場に

 似つかわしくない

 さわやかな

 笑顔を

 浮かべた。

ベトナム人は、

 この湖で

 魚を獲って

 豊かに

 暮らしてます。

 お金を

 恵んでやることなんか

 ありません」

 居心地の悪い、

 長い沈黙が

 続いた。

 再び

 エンジンをかけて

 金盥を

 置き去りにすると、

 唐突に

 若者は言った。

「みんな、

 死んでしまいました」

 若者の父親は

 英語教師で、

 強制労働収容所で

 処刑された。

 兄弟は餓死し、

 生き残った母親と

 二人で

 暮らしてきたが、

 その母親も

 10歳のときに

 病気で死んだ。

 それからは

 頼る人もなく、

 ずっと

 一人で

 生きてきた。

 ようやく

 操舵手の仕事に

 ありついたが、

 1日働いても

 数百円の

 収入にしか

 ならない。

 その金を貯めて

 英語を

 勉強しているのは

 自由を得るためだ。

 自分は

 あばら家と湖を

 往復する以外、

 この世界を

 何も知らない。

 そんな話だった。

 別れ際に、

 私は

 この若者に

 いくばくかの

 金を

 渡した。

 彼の名誉のために

 言い添えれば、

 その身の上に

 同情したのではない。

 ポルポト

 統治は

 ベトナム戦争終結

 1975年から

 4年間だから、

 23歳の彼が

 生まれる前に

 虐殺は

 終わっていた。

 だが

 すべてが

 作り話だとしても、

 彼の言葉には

 なお、

 こころを

 揺さぶるものが

 あった。

 ひとは

 ときに、

 思わぬところで

 大切なことを

 学ぶ。

 私たちは

 みな、

 自由な人生を

 当然のように

 享受している。

 だが

 その輝きは、

 夕暮れの虹のように

 儚い。

 いま、

 手にしている

 豊かさを

 すべて

 失ったとき、

 あなたは

 それでも

 まだ

 自由だろうか。

 私は

 愚か者なので、

 こんな

 当たり前のことに

 ずっと

 気づかなかった。

 観光客相手に

 ボートを運転する

 カンボジア

 若者ですら

 知っていた

 というのに。

 彼は

 私に向かって、

 何度も

 繰り返した。

「ノー・マネー、

 ノー・フリーダム」

 

 

「自由」とは

「誰にも、

 何ものにも

 隷属しない

 状態」

 のことで、

 そのためには

 一定の条件を

 満たさなければ

 なりません。

 この条件とは、

 端的にいえば

 “お金”です。

「自由」を

 経済的な意味で

 定義するならば、

「国家にも、

 会社にも、

 家族にも

 依存せず、

 自由に

 生きるのに

 十分な資産を

 持つこと」

 になります。

 これが

「経済的独立

 Financial Independence 」

 です。

 

 

・欧米や日本のような

 豊かな社会では、

 特別な才能など

 なくても、

 勤勉と

 倹約、

 それに

 共稼ぎだけで、

 “誰でも”

 億万長者になって

 経済的独立という

 ゴールに

 到達できます。

 これは

 一見、

 素晴らしいことですが、

 きわめて

 残酷な事実でも

 あります。

 努力だけで

 お金持ちになれるのなら、

 貧乏は

 社会制度の矛盾や

 ネオリベの陰謀によるもの

 ではなく、

 自己責任になるからです。

 

すべての作品が見放題【ABEMA】

 

・お金と幸福の

 関係については

 もうひとつ、

「限界効用の逓減」

 について

 触れておかなければ

 なりません。

 これは

 経済学の

 基本ですが、

 全然

 難しい話では

 ありません。

 お酒が好きな人なら、

 暑い日の

 喉が

 からからに

 渇いたときに

 飲む

 生ビールの

 最初のひと口ほど

 美味しいものは

 ないことを

 知っているでしょう。

 しかし

 この美味しさは

 2杯目、3杯目と

 ジョッキを

 お代わりするに

 つれて

 なくなっていき、

 やがては

 惰性で

 飲むだけに

 なってしまいます。

 このとき、

 ビールの

 美味しさを

「効用」

 といいます。

 ビールを

 1単位

(1口目から2口目、

 ジョッキ

 1杯目から2杯目)

 追加したときの

 美味しさ

 =効用の変化が

「限界効用」

 です。

 ビールを

 飲めば飲むほど

(投入する単位を

 増やせば増やすほど)

 美味しさ

 =効用は

 少しずつ

 減っていくので、

 限界効用が

 逓減するのです。

 限界効用の逓減は、

 嬉しいことにも

 悲しいことにも

 いずれ

 慣れてしまう

 という、

 ヒトの

 心理に基づく

 普遍的な

 法則ですから、

 ビール以外にも

(ほとんど)

 あらゆるものに

 当てはまります。

 もちろん

 お金も

 例外では

 ありません。

 

 

・月給20万円の人が、

「来月から

 1万円アップで

 11万円にしてやる」

 と言われたら

 ものすごく

 嬉しいでしょう。

 それに対して

 月給100万円の人が

(1単位増えて)

 101万円になったとしても、

 そのことに

 気づきもしないかも

 しれません。

 それでは

 お金の

 限界効用は

 どのように

 逓減するのでしょうか。

 これは

 もちろん

 個人によって

 異なりますが、

 アメリカでは

 年収7万5000ドル、

 日本では

 年収800万円を

 超えると

 幸福度は

 ほとんど

 上昇しなくなることが

 わかっています。

 興味深いことに、

 アメリカと日本で

 幸福度が

 一定になる金額は

 ほとんど

 変わりません。

 誤解のないように

 言っておくと、

 これは

「幸福になるのに

 お金は関係ない」

 ということでは

 ありません。

 逆に、

「お金は

 幸福になる

 もっとも

 確実な方法だ」

 ということを

 示しています。

 

 

・近年は

 幸福度についての

 様々な統計調査が

 行われていますが、

 それによれば

 お金が

 幸福度を

 低下させることが

 はっきりしています。

 しかし

 これは、

「お金があると

 幸福になれない」

 ということ

 ではなく、

「お金のことを

 考えすぎると

 不幸になる」

 ということです。

 

 

・お金と幸福に関する

 次のような

 シンプルな

 法則が

 導き出せます。

①年収800万円

世帯年収1500万円)

 までは、

 収入が増えるほど

 幸福度は増す。

②金融資産

 1億円までは、

 資産の額が

 増えるほど

 幸福度は増す。

③収入と資産が

 一定額を超えると

 幸福度は

 変わらなくなる。

 

 

・マイナス金利

 世界では、

 賢い人は

 利潤を

 最大化するために

 金融資本よりも

 人的資本を

 有効活用する、

 すなわち

「働く」

 のです。

 

 

・小学生でも

 わかることですが、

 お金持ちになる

 方法は

 3つしか

 ありません。

①収入を増やす。

②支出を減らす。

③資産を上手に運用する。

 これを

「お金持ちの方程式」

 として

 表すと

 次のように

 なります。

 

 富=収入―支出+(資産×運用利回り)

 

 このうち

(資産×運用利回り)が

 人生の土台における

 金融資産に

 相当しますが、

 ゼロ金利の世界では

「お金が働いてくれない」

 のですから、

 経済的独立を

 達成できたとしても、

 そのステイタスを

 維持する

(銀行という

 無料の貸金庫に

 お金を預けておく)

 程度の

 役割しか

 果たしてくれません。

 そうなると

 残る2つの要素、

 すなわち

「収入を増やす」

 ことと、

「支出を減らす」

 ことが

 重要に

 なります。

 

 

・同じ結果を

 得られるのなら、

 安ければ

 安いほどいい。

 

 

ダイエーの創業者である

 中内功氏は

 晩年、

 私財を投じて

 設立した

 流通科学大学

 教壇に立つために

 東京の自宅から

 新幹線で

 神戸に通いますが、

 そのときは

 必ず

 普通車に乗りました。

 知人から

「なぜ

 グリーン車

 しないんですか」

 と訊かれ、

 中内氏は

「それに乗ったら

 早く着くんかい?」

 と訊き返したそうです。

 ビル・ゲイツも、

 飛行機は

 エコノミーを

 利用することで

 知られています。

 その理由を訊かれて、

「エコノミーを

 利用すれば

 旅費は

 少なくて

 済む。

 ファーストクラスでも、

 飛んでいる時間は

 変わらない」

 とこたえたのも

 中内氏と同じです。

 

 

・もっとも

 重要な

「富の源泉」は

 人的資本である。