ひーぶろぐ。

読書していたときに心に触れた言葉を残しています。

ひょっぽこ読書記録No.156 『メロディを買った青年』タルムードより

 

 

《メロディを買った青年》

 

 

 

 ある村に

 裕福な家庭に

 育った娘がいた。

 娘の両親は

 熱心な

 ユダヤ教徒だった。

 結婚適齢期になったので、

 娘の両親は

 良い婿がいないかと

 探していた。

 隣村に

 裕福ではないが、

 真面目で

 きちんとした

 両親に育てられた

 青年がいた。

 その青年は

 ヘブライ聖書を

 しっかり

 勉強し、

 毎日シナゴークに通う、

 立派な

 ユダヤの若者だった。

 娘の両親も

 青年を気に入り、

 結婚話が

 まとまった。

 娘の両親は、

 その青年に、

 結婚式の道具を

 市場で買うための、

 支度金を与えた。

 

 青年は

 買い出しのために

 市場に向かった。

 すると、

 市場に行く

 途中の道で、

 美しいメロディが

 聞こえてきた。

 どこから

聞こえてくるのかと

 行ってみると、

 羊飼いの牧童が

 ハープを奏でていた。

 青年は

「そのメロディを

 ぜひ教えてください」

 と牧童に頼んだ。

 その牧童は

「100シュケル

 くだされば

 教えましょう」

 と言った。

 100シュケル

 大金だったが、

 青年は

 お金を払って

 そのメロディを買った。

 その後、

 市場で

 買い物をしようと

 したところ、

 青年は

 先ほど買った

 メロディを

 忘れていることに

 気がついた。

 青年は

 もう一度

 引き返して、

 牧童に

「もう一度

 教えてください」

 と頼み込んだ。

 牧童は

「いいですよ。

 100シュケルです」

 と言ったので、

 また100シュケル払って

 メロディを買った。

 買い物の帰り道で

 今度は

 別のメロディが

 聞こえてきた。

 同じ牧童が

 奏でていた。

 同じ曲に

 まだ続きが

 あったのである。

 そこで

 青年は牧童に

「さっきの曲の続きを

 教えてくださいますか」

 と頼んだ。

 ところが

 青年は

 買い物で

 お金を全部

 使ってしまったことに

 気づいた。

 そこで

 青年は

「じゃあ、

 100シュケル

 代わりに、

 私の買った

 婚礼の道具を

 差し上げます」

 と言うと、

 牧童は

「いいですよ」

 と言って、

 曲の続きを

 教えてくれた。

 婚約者の家に戻ると、

 娘の両親は

「どんなものを

 買ったのかい?」

 と青年に聞いた。

 青年は

 メロディを買うために

 お金を

 使い果たしてしまい、

 家財道具は

 買っていない

 と説明すると、

 婚約者の両親は、

 怒るどころか

 逆に、

「それでこそ

 娘の結婚相手に

 相応しい」

 と大いに褒め称えた。

 青年は

 そのメロディを演奏し、

 また

 多くの人にも教え、

 その曲で

 多くの人が

 幸福な気持ちになった。

 そうして

 年月が過ぎ、

 青年も年をとって

 天国に召されたところ、

 なんと

 天国で

 そのメロディが

 奏でられていたのだった。

 青年の魂は、

 最高の安らぎを

 与えられることになった。

 

 

・「形ないもの」に

 目を向ける。

 知的価値は

 物的価値に優る。