ひーぶろぐ。

読書していたときに心に触れた言葉を残しています。

ひょっぽこ読書記録No.152 『母鳥と三羽の雛』タルムードより

 

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《母鳥と三羽の雛》

 

 

 

 鳥の巣が

 大嵐に巻き込まれ、

 このままでは

 巣もろとも

 三羽の雛も

 地上に落下してしまう

 危険が迫っていた。

 母鳥は

 海を渡って

 安全な岸に

 雛を避難させよう

 と思った。

 しかし、

 大雨と強風の中、

 一度に三羽の雛は

 運べないので

 母鳥は

 一羽ずつ

 運ぶことにした。

 まず一羽の雛をくわえて

 母鳥は

 大雨、大嵐の中を

 巣から飛び立った。

 

 海を渡っている途中で

 母鳥は雛に尋ねた。

「子供よ、

 お母さんは

 命がけでお前を

 助けようとしているが

 お前は

 その代わりに

 何をしてくれるのかい?」

「お母さん、

 こんな大嵐の中で

 そんなことを

 考えている余裕は

 ありません。

 とにかく

 私を安全なところに

 運んでください」

 その答えを聞いた母鳥は

 その雛を

 パッと

 海に

 落としてしまった。

 

 母鳥は

 巣に戻ると、

 次の雛をくわえて

 嵐の中を

 安全な対岸へと

 飛び立った。

 そして

 また母鳥は

 雛に同じことを

 聞いた。

 すると

 雛は

 こう答えた。

「お母さん、

 まず私を

 安全なところに

 運んでください。

 そうすれば

 必ず私は毎日

 食べ物を運んできて

 恩返しをします」

 それを聞いた母鳥は

 その雛も

 海に

 落としてしまった。

 

 母鳥は

 再び巣に戻ると

 最後の雛を

 口にくわえて

 安全な対岸へと

 飛び立った。

 風雨の舞う海上

 飛びながら

 母鳥が

 同じことを聞くと

 その雛は

 こう答えた。

「お母さん、

 私は

 お母さんがしてくれたことを

 必ず私の子供にも

 するつもりです」

 これを聞いた母鳥は

 この雛を

 安全な対岸に

 無事送り届けた。

 

 

・教育とは

「教育することを

 教育する」

 ことだ。

 

 

 この話は

 日本人が読むと

 残酷に感じるかも

 しれない。

 母鳥の取った行動が

 厳しすぎる、と。

 この話を初めて聞いた

 ユダヤの子供たちも

「怖い」

 と感じるだろう。

 ユダヤ人は

 親から子へと

 ユダヤの教えを

 受け継いでいくことを

 最も重要なことと

 考えている。

 このことが

 重要だからこそ

「怖さ」

 とともに

 子供たちの心に

 しっかりと残すための

 お話なのだ。

 

 

 ユダヤ人は

 特に家庭での教育に

 力を入れてきた。

 古代から

 女性は差別されることが

 多かったが、

 ユダヤでは

 そのようなことはなく、

 権利面で

 差別されることは

 なかった。

 男性は、

 毎日働き、

 シナゴークで宗教活動をし、

 ヘブライ聖書を勉強するなど、

 いろいろやることがあって

 大変だが、

 女性は

 そのほとんどの義務を

 免除されている。

 それどころか、

 古代から

 子供の教育のために、

 女性の地位は

 高かったのだ。

 どの国のシナゴークでも

 子供向けの教育があり、

 ユダヤの母親が

 先生役を分担している。

 そこには

 男親も参加している。

 ユダヤでは、

 教育そのものが

 宗教の重要な要素なのである。

 教育熱心な母親が、

 ユダヤの多くの偉人を

 生み出してきたのだ。

 あのイエス

 そうしたユダヤ人の一人だ。

 こうした

 ユダヤの家庭や、

 シナゴークでのコミュニティは、

「砂漠に立つ

 葉の繋がった樹木」

 に例えられる。

 その木陰に守られながら

 子供たちは

 育っていく。

 その子供たちが

 大人たちに聞く。

「私たちを守ってくれた

 皆さんに、

 何をすれば

 いいですか」

 すると

 ユダヤの親たちは

 こう答える。

「君たちが

 大人になった時、

 子供の頃に

 自分がしてもらって

 良かったと思う

 同じことを、

 自分たちの子供に

 してあげなさい」

 こうして、

 お金ではない価値が

 次の世代に

 伝わっていく。

 タルムードの説話の意義は、

 まさに

 この語り継ぎ、教え継ぎに

 あるのである。

 

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