ひーぶろぐ。

読書していたときに心に触れた言葉を残しています。

ひょっぽこ読書記録No.139 『魔法のザクロ』タルムードより

 

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《魔法のザクロ》

 

 

 

 あるところに

 仲良しの

 三人の兄弟がいた。

 兄弟はそれぞれ

 成人に達したので、

 10年間

 各地で修業することにした。

 一人は東に、

 一人は西に、

 一人は南に

 旅立った。

 兄弟たちは

 旅立ちの前に

 誓い合った。

 また10年後に

 この家で会おう、

 そして

 それぞれの10年間に

 自分が見つけた

 最も不思議なものを

 持ってくることにしよう。

 

 

 一番上の兄は

 東に行き、

 ある旅人から

 世界の隅々まで見える

 不思議なガラスのコップを

 買った。

 このコップから

 世の中を見渡すと

 本当に世界の隅々まで

 見えるのである。

 長兄は、

 他の兄弟が

 どんなものを持ってくるか

 わからないが、

 これこそが

 世界で最も不思議なものに

 違いないと

 心の中で確信した。

 

 

 二番目の兄は

 西に行った。

 そして

 ある町で

 絨毯売りに会った。

 絨毯売りに

 その絨毯はいくらか

 と聞くと、

 不思議なことに

 指さした絨毯が

 モソモソと勝手に動き出した。

 二番目の兄は驚いて、

 絨毯売りに尋ねた。

「何だ、

 この絨毯の下に

 ネズミでもいるのではないか」

 すると

 絨毯売りは

 花を膨らませて

 こう切り返した。

「とんでもない、

 この絨毯は

 生き物です。

 空高く飛んでいくことが

 できるのです。

 これに乗れば

 どこでも

 鳥よりも速く飛んでいくことが

 できます。

 今お買いにならないと

 すぐ売れてしまいますよ」

 そこで

 二番目の兄は、

 この空飛ぶ絨毯こそ

 世界で最も不思議なものだと思い、

 大金をはたいて

 その絨毯を買った。

 間違いなく

 これで他の兄弟たちよりも

 抜きん出たに違いないと

 確信した。

 

 

 一番下の弟は

 南に行った。

 どんどん南に行くと、

 不思議な森に出くわした。

 その森の中を

 ずんずん入っていくと、

 一本の不思議なザクロの木が

 立っていた。

 何が不思議かというと、

 そのザクロの木には

 花はいっぱいついているのに、

 実は一つしかついていない。

 しかも

 その実は

 真っ赤に熟れているのに、

 たった一つだけなのだ。

 不思議に思って

 そのザクロの実を取ろうと

 手を差し出すと、

 手のひらにポタッと落ちてきた。

 すると

 また不思議なことが

 起こった。

 咲いていた花の一つが

 急に真っ赤な熟れたザクロの実に

 変わったのである。

「うん、

 これこそ

 世界で最も

 不思議なものだ。

 この木を持って

 帰ろう」

 そう思った途端に、

 なんと

 ザクロの木は

 パッと消えて

 なくなってしまった。

 はっとして

 手の中を見ると、

 ザクロの実は消えずに

 残っている。

 一番下の弟は、

 このザクロの実こそ

 不思議なものだと

 確信し、

 

 10年後に再会を誓った

 家に戻ってきた。

 三人の兄弟は、

 それぞれ

 持って帰ったものを

 互いに見せ合った。

 

 

 世界の隅々まで見渡せる

 ガラスのコップで見ると、

 なんと

 ある国のお姫様が重病で

 ベッドに寝ている姿が

 映った。

 傍らで

 王様が嘆いている。

「誰か

 治してくれる者は

 いないか、

 早く

 治してくれる者は

 いないか。

 どんな医者に頼んでも

 この娘は回復しない。

 早くしないと

 死んでしまいそうだ」

 と嘆いている。

 これを聞いた三人兄弟は

 急いでいこうと、

 魔法の絨毯に乗って

 お姫様の元に

 飛んでいった。

 そして

 一番下の弟が、

 これを食べれば

 お姫様の病気が

 きっと良くなるに

 違いないと、

 ザクロの実を

 半分に割り

 お姫様に差し出した。

 一口、二口、

 お姫様が食べると、

 顔に精気が戻り、

 それまで歩くこともできなかった

 お姫様が

 力強く

 立ち上がることができた。

 王様は感激し、

 三兄弟に

 こう申し渡した。

「お前たち三人のおかげで

 姫が重病から回復した。

 三人の兄弟の誰でも

 姫と結婚しても良い。

 三人で話し合って

 誰が結婚するか

 決めなさい」

 すると、

 姫が

「私に質問させてください」

 と割って入った。

 

 まず一番上の兄に

 姫が聞いた。

「あなたは

 世界の隅々が見渡せる

 ガラスのコップで

 私の重病を

 発見してくださいました。

 その望遠鏡のようなコップは

 今でも元のままですか?」

 一番上の兄は、

「はい、

 全く元のままです」

 と答えた。

 姫は

 次に二番目の兄に聞いた。

「二番目のお兄様、

 あなたは

 魔法の絨毯に乗って

 私のところに

 いち早く

 駆けつけてくれましたが、

 その絨毯は

 今でも空を飛べますか?」

 二番目の兄は、

「はい、

 全く元のままで

 何も傷ついていませんし、

 空も飛べます」

 と答えた。

 最後に

 姫は

 三番目の弟に聞いた。

「さて

 三番目の弟、

 あなたは

 私に

 ザクロの実を食べさせて

 病気を治してくれました。

 そのザクロの実は

 以前と違いますか?」

 一番下の弟は、

「はい、

 お姫様に

 半分差し上げましたので、

 今は半分しかありません」

 そこで

 姫は

 高らかに宣言した。

「私は

 この一番下の弟と

 結婚します。

 何故なら

 彼は

 私のために

 大切なザクロの実を

 半分失ったのですから」

 

 

「ノーペイン・ノーゲイン」

 犠牲なくして成功なし。

 失ったものの大きさは

 成功に比例する。

 

 

 この話は

 ユダヤの母親が家庭で

 子供にする。

 ただし、

 途中までしか

 話をしない。

 母親は

 子供に向かって

「さて

 三人の兄弟のうち、

 お姫様が

 結婚相手に選んだのは

 誰でしょうか?」

 で話を止める。

 後は

 子供の答えを待つ。

 その答えに対して

「何故?」

 と聞く。

 こうして

 ユダヤ式教育が

 始まるのである。

 母親は

 簡単に答えを

 言ったりはしない。

「一番下の弟」

 と子供が

 正解を言い当てても、

 その理由を

 ちゃんと答えられなければ、

 何度でも

「何故?」

 を繰り返す。

 子供が

 頭を悩ませ、

 考え抜いた挙句に

「三人の中で一番

 失ったものが

 大きいから」

 と答えを導き出せた時には、

 にっこり微笑んで、

 よくできたと

 誉めてあげる。

 こうして

 ユダヤの子供たちは

「WHY」

 から学んでいくのだ。

 

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