ひーぶろぐ。

読書していたときに心に触れた言葉を残しています。

ひょっぽこ読書記録No.105 『量子コンピュータとは何か』ジョージ・ジョンソン 水谷淳訳 ハヤカワ文庫 -抜粋10箇所

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量子コンピュータとは何か』

   ジョージ・ジョンソン

   水谷淳訳

     ハヤカワ文庫

 

 

 

・ここで、

 回路図の

 ある部分を

 線で囲み、

 その部分を

 ブラックボックスだとして

 考えてみよう。

 以後

 枠の中のことは

 考えないので、

 黒く塗りつぶして

 しまっても

 かまわない。

 この枠の中の

 回路は

 ある入力に対して

 ある出力を

 与えるものだ、

 と決めつけてしまうのだ。

 後から

 その覆いを外して

 回路を

 より細かく

 調べてもいいし、

 さらに後ろに下がって

 回路を

 もっと大きな

 一つの固まりとして

 捉えてもいい。

 たいていの人は

 テレビそのものを、

 空中から

 信号を受け取って

 それを

 魔法のように

 音声や映像に

 変える、

 一つの大きな

 ブラックボックスだと

 考えている。

 どんなに

 複雑な装置でも、

 様々なレベルから

 抽象化して

 理解することが

 できる。

 

 

・この時点では

 まだ、

 得た知識を

 一般読者に

 わかりやすく

 伝える

 専門家にはなれない。

 少なくとも

 初めのうちは

 読者の一人でしかない。

 しかし

 探求を進めるにつれて、

 より積極的に

 行動するようになる。

 インターネットで

 論文をダウンロードし、

 その難解な記述を

 詳しく読み解き、

 序文や結論から

 うまい質問を

 考え出そうとする。

 そして

 科学者に

 Eメールや電話で

 質問を浴びせ、

 研究室を

 訪れるようになる。

 しかし

 常に

 彼らとは

 ある一定の距離を

 置かなければならない。

 それは

 読者との

 暗黙の了解事項だ。

 決して

 何か

 下心があっては

 ならない。

 目的は

 あくまで、

 門外漢である自分が

 新たな科学の進歩を

 どう捉えたか、

 それを

 数字を使わずに

 比喩を用いて、

 文章の形で

 一般の人々に

 伝えることだ。

 

 

量子力学によれば、

 日常の現実に基づく

 制約には

 意味がない。

 微小な物体は、

 空間を無視して

 二点間を

 飛び移ったり、

 あるいは

 同時に

 いくつもの場所に

 存在したりできる。

 量子コンピュータは、

 こうした

 抜け道を

 利用して

 膨大な数の計算を

 同時に行い、

 今まで

 解けなかった問題を

 解くことができる。

 

 

・研究所の中心部、

 広さ約1000平方メートルの

 大きな部屋に

 設置された

 ブルーマウンテンは、

 世界で

 最も強力な

 計算機だ。

 あなたの

 机の上にある

 コンピュータには、

 おそらく

 プロセッサが

 一個だけ

 備わっており、

 その中では

 何百万個という

 小さなスイッチが、

 一秒間に

 数百万回

 オン・オフを

 繰り返しているはずだ。

 ブルーマウンテンを

 構成する

 384台のキャビネットには、

 そうしたチップが

 それぞれ

 16個ずつ

 備わっている。

 これら

 計6144個の

 プロセッサは、

 いっせいに

 協力して

 驚くほど複雑な

 ある計算を行う。

 核爆発の

 シミュレーションだ。

 冷戦が終わり、

 条約によって

 大気圏や地中での

 核実験が

 禁止されたため、

 エネルギー省は

 代わりに

 核実験を

「シリコンチップの中」で

 行わせようとしている。

 ブルーマウンテンの持つ

 1兆5000億バイトの

 シリコン製メモリチップの中で、

 核爆発を

 再現するのだ。

 

 

・このコンピュータの

 管理者たちは、

 その恐るべき性能を

 自慢気に

 まくし立てる。

 何千という

 プロセッサが

 約800キロもの長さの

 光ファイバー

 繋がれている。

 この装置は

 1.6メガワットの電力と

 530トンの冷却水を

 消費する。

 そして

 この装置は

 3テラフロップスの

 コンピュータと呼ばれる。

 1秒間に

 3兆回の演算を

 処理する

 という意味だ。

 

 

・コンピュータセンターから

 少し離れたところに、

 最近まで

 掘削機や金属カッターなどの

 作業機械が

 耳障りな音を

 立てていた場所がある。

 ここで

 二人の

 若き物理学者

 マニー・ニルと

 レイモンド・ラフラムが、

 もっと

 ひっそりと

 スーパーコンピュータの

 実現に

 取り組んでいる。二人は、

 研究所のはずれに建つ

 茶色の漆喰塗りの

 ありふれた建物の中で、

 小さすぎて

 顕微鏡でさえ

 見ることのできない

 コンピュータを

 設計している。

 10個ほどの

 原子が

 つながった

 1個の

 分子だ。

 

 

・ロスアラモスの

 スーパーコンピュータが

 これに

 太刀打ちするには、

 数百京個の

 プロセッサが要る。

 そして

 単純計算では、

 3兆平方キロの敷地が

 必要となる。

 地球だけでは

 間に合わない。

 地球の表面積は

 たった

 5億平方キロだ。

 目に見えない

 64ビットの

 量子コンピュータ

 匹敵する

 スーパーコンピュータを

 作るには、

 すべての海を

 人工の土地で

 敷き詰めたとしても、

 地球5000個の土地が

 必要になる。

 それが、

 たった

 一個の分子で

 済むというのだ。

 

 

・コンピュータの分野では

 かなり昔から、

「不可能」

 という

 言葉の代わりに、

 いくぶん

 やわらかな

「困難」

 という

 言葉が

 使われている。

 

 

・現代のパソコンの場合、

 デスクトップのアイコンを

 ダブルクリックすれば、

 ディスクドライブから

 一連のデータを

 気軽に

 呼び出すことができる。

 そのビット列は、

 何千という

 微小スイッチを、

 ワープロ

 インターネット・ブラウザや

 MP3プレーヤーといった

 小さな仮想機械として、

 一時的に

 機能させるためのものだ。

 こうした仮想機械は、

 必要なときだけ

 存在させることができる。

 仕事が終われば

 機械を消去し、

 1と0からできた

 別の機械を

 呼び出すのだ。

 

 

・コンピュータ革命の

 第一段階は、

 デジタル論理回路

 自動化と小型化、

 そして

 ジェニアックから

 ブルーマウンテンへ、

 ブルーマウンテンからQへ

 といった

 度重なる

 拘束によって

 もたらされた。

 第二段階は

 おそらく、

 自然界の持つ

 奇妙な量子の論理を

 利用する

 という、

 直感に反した

 新たな方法によって

 もたらされることだろう。

 コンピュータに対する

 古い概念は

 崩れ始めたのだ。

 もはや

 ティンカートイを

 いじり回すことも

 なくなるだろう。

 

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