ひーぶろぐ。

読書していたときに心に触れた言葉を残しています。

ひょっぽこ読書記録No.93 『創業社長』原作牛次郎 漫画川本コオ ー抜粋16箇所

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『創業社長』

  原作 牛次郎

  漫画 川本コオ

 

 

 

「変なとこに

 いると

 浮浪児狩りに

 つかまっちゃう

 もんね

 兄ちゃん」

「浮浪児狩り?」

「なんだい

 それも

 知らねえのか

 俺たちみての

 つかまえちゃ

 ローヤへ

 ブチこむんだよ」

「ローヤへ?

 まさか……」

「ホントだよ

 そんで

 そうなったら

 兄ちゃんと

 別々に

 されちゃうんだから

 ……そんなの

 いやだよ」

「浮浪児狩りか

 バカな話だ……

 しかし

 おじさんだって

 あぶないかもな

 なんの仕事もない

 浮浪者だものな……」

「おとなの

 浮浪者だね

 はは」

「そういうことだ……」

 しかし

 本当に

 何かしなきゃ……

 このままでは

 飢え死にだ……

 せっかく

 助かった

 命を……

 俺の乗っていた

 輸送船は

 撃沈され……

 ボートを

 おろすヒマもなく

 海上

 放り出された……

 夜になり

 朝になり……

 戦友たちは

 力尽き

 海中に

 沈んでいった。

 そして

 6日間……

 俺は

 精神力で

 漂いつづけ……

 幸運にも

 漁船に

 拾われた……

 そうとも

 俺は

 死んでいる!

 一度はな……

 だったら……

 まだまだ

 続くだろう

 この地獄の中で

 俺は……

 やるだけのことは

 やり抜いてやる!

 

 

「猪狩

 今夜は

 初めての

 仕事だ。

 黙って

 二人の

 指示に従えばいい。

 はっきり

 言っておくが

 危険な仕事だ。

 下手すりゃ

 MPの銃で

 殺されちまう。

 ここまで言やあ

 わかるな。

 逃げるときは

 人にかまうな。

 人も

 お前を

 かまっちゃ

 くれねえだろう。

 頼りは

 自分の才覚だけだ。

 言うことは

 それだけだ。

 成功すりゃあ

 それなりの

 小遣いには

 なるだろう」

 

 

・俺は

 一度

 死んでいる……

 二度は

 死ぬまい……

 多くの

 戦友が

 死んだ……

 九死に一生を得て

 俺は

 生きている……

 生きていても

 仕方のない

 時代に

 生きている……

 俺は

 戸惑っている……

 この

 混乱の時代を

 どう生きれば

 よいのか?

 生きることは

 死ぬことよりも

 残酷な場合が多い。

 人は

 己の価値を

 知ることで

 生きていく。

 しかし

 戦後の

 混乱期には

 その価値が

 根底から

 変革した。

 

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「話って

 なんですか?」

「うむ

 その前にだ、

 この眼下の

 焼野原を

 どう思う?」

「どう思うとは?」

「なにもなかった

 焼土に

 ぽつぽつと

 バラック

 建ち始めている」

「しかし

 どうなるか

 わからない」

「それが

 今の日本だ。

 東京だよ」

「生き延びた

 人間たちが

 細い木に絡まる

 つたのような

 生活をしている。

 その細い木は

 いつ朽ち果てるかも

 わからない。

 なにしろ

 今の東京は

 砂漠と同じ

 ですからね」

「そうだ

 猪狩

 お前の

 言う通りだ。

 食料も

 衣料も

 建築資材も……

 なにもかもが

 不足している。

 よく生きているものだ」

「そうですね。

 自分も

 復員してきて

 変わり果てた

 東京の姿に

 愕然として

 いまだに

 なにをやれば

 いいのか

 皆目見当もつかない

 状態です」

「焦ることはないさ。

 なにもかも

 そして

 誰もが

 一からのスタート台に

 立っているんだからな。

 この先

 どう生きていけばいいのか

 誰にも

 答えは出せんよ」

「一からのスタート……」

「そうだ

 なにもかもが

 ここから

 始まるんだ」

 

 

「今の東京は

 砂漠だ……

 砂漠に

 必要なのは

 水だ……

 俺は

 その水を

 運んでいる……

 物は

 流れねば

 価値を

 生まない。

 物を流す……

 物流か……

 俺の

 これからの

 仕事に

 なるかも

 しれない」

 

 

「俺は

 今

 この東京に

 無性に

 物を

 運び込んで

 やりたい!」

 この男は

 俺にない

 情熱を

 持っている。

 心の底に

 白けた部分がない。

 この情熱は

 きっと

 この男の

 財産になってゆくだろう。

 

 

・ひとつのものを

 徹底的に

 価値づけてゆくのは

 立派な仕事だ。

 右の商品を

 左に移すだけで

 こういうことになる。

 

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・これでいい。

 一度は

 死んだはずの

 俺が

 東京の復興の

 役に立っているんだ。

 単なる理屈

 じゃない。

「猪狩よ。

 現代の

 紀伊国屋文左衛門だな」

「ちょうどよかった。

 欲しいものが

 あるんですが……」

「ん?」

「それも

 ふたつ……」

「今度は

 何を考えているんだ?

 俺はな、

 貴様って奴が

 だんだん

 恐ろしく

 見えてきたよ」

「何故です?

 悪いことは

 していませんよ」

「当たり前だ。

 こういう時代だから

 生きてゆくために

 多少の悪は

 許される。

 しかし、

 俺が言いたいのは

 そんなことじゃない。

 お前って奴は、

 次々と

 とんでもないことを

 考え出して

 実行し、

 それが、

 みごとに

 ツボに

 はまってゆく。

 今度の

 材木にしたって、

 みろ

 羽が生えたように

 売れてゆき

 次のトラックの分を

 予約している。

 トラックは

 一度に

 三台を

 木曾に向かわせたが

 とてもじゃないが

 間に合わん。

 しかもだ

 材木は

 値が下がらないから

 利益も

 とんでもない額に

 なった」

「そいつは

 結構ですね」

「なんだ

 嬉しくないという

 顔だな……」

「いや

 嬉しいですよ。

 しかし、

 この程度のことなら

 誰でも

 考えつくことです。

 やらないのは

 金とチャンスが

 ないからだけですよ」

「恐れいったな。

 まだ儲け足りんといった

 顔つきだ」

「いや

 儲けなんか

 どうでも

 いいんです。

 この東京に

 もっともっと

 大量に

 物資を

 運び込みたいんです」

「欲しいものって

 なんだ?

 できるかぎりのことは

 する」

「ひとつは

 船です」

「船!?」

「東京に

 物資を

 運び込むためには

 トラックだけでは

 たかが知れています。

 だから

 船が

 欲しいんです。

 どんな

 オンボロ貨物船でも

 いい」

「難しい注文だな」

「しかし

 どこかにあるはずだ。

 探してほしい。

 そして

 もうひとつは

 そんなに

 難しいことじゃない」

「ほっ……

 良かった。

 今度は

 飛行機が欲しいなんて

 言い出すんじゃないかと

 ひやひやしていたんだ」

「本ですよ。

 雑誌を含めての……」

「出版物ってことか?

 それを

 どうする?

 勉強のやり直しでも

 始めるつもりか?」

「いや、

 俺が読むんじゃないんです。

 もちろん

 俺も

 読みたいけど……

 戦争に負けて

 ものの考え方が

 180度

 ガラリと

 変わったんです。

 日本中の人々が

 新しい情報や

 新しい考え方で

 書かれた出版物を

 待ち望んでいるのです。

 それだけじゃない。

 娯楽にも

 飢えています。

 そういう人々に

 たくさん

 本を読んでほしいのです」

「なるほど

 それは

 俺にも

 痛いほど

 わかる……」

 

 

・こんな時代でなかったら

 俺だって……

 そうさ、

 俺だって……

 好きな学問で

 身を立てようと

 志したこともある……

 しかし

 時代が

 俺を

 押しつぶしてしまった。

 猪狩よ、

 今

 一番

 本が必要なのは

 この俺かもしれない。

 

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「今の日本人は

 胃袋が飢えている以上に

 心も飢えているんだな」

「そうです。

 活字に

 飢えているんです。

 精神的な

 ゆとりを

 求めているんです」

「猪狩よ、

 本を集めろ。

 本当に

 心ゆくまで

 本を読める時代に

 ならなくては

 いけないんだ。

 しかし、

 よく

 気がついたな……」

「木曽まで

 空のトラックを

 走らせることはない

 と思ったのが

 最初の発想ですが……

 では、

 東京から

 地方に

 何を運んだら

 良いのか?

 これには

 悩みました。

 だって

 東京で

 生産しているものは

 何もないんですよ。

 そう考えていたときです。

 木曽の山の中で

 昼休みに

 きこりが

 ものすごく

 古い雑誌を

 読んでいるのを

 目撃したんです。

 その雑誌は

 例によって

 一億火の玉を

 呼びかけている……

 もう終わったんです。

 あんな馬鹿な戦争は!」

「……」

「しかし

 古い雑誌は

 そう……

 文字通り

 古傷のように

 それを

 はっきり

 とどめている……

 あんなものを

 読ませたくない、

 つくづく

 そう思いましたよ」

 

 

「これからは

 四人で

 より一層

 力を合わせて

 生きてゆかなくては

 ならない。

 家族のようにな……

 それが……

 先に逝ってしまった

 衣笠さんを

 安心させる

 たったひとつの

 道だ。

 そこで

 みんなさえ

 賛成してくれるなら

 俺は……

 今持っているもの

 すべてを

 売り払おうと

 思っている」

「え?」

「ど……

 どういうこと?」

「このまま

 波に

 もまれ続けていたら

 駄目になるからだ」

「波って?」

「東京の

 めちゃくちゃな

 社会の波だよ。

 何ひとつ

 人間らしいところが

 ない」

「……」

「でも

 儲かっているんだろ」

「ああ、

 損はしていない」

「だったら

 何も

 全部

 売ることは……」

「健太……

 仕事というものは

 そういうものではない。

 今は

 ものが

 絶対的に

 不足している

 時代なのだ。

 ものを集めて

 東京へ

 運び込めば

 たいていは

 儲かるさ。

 闇屋の全盛時代

 ってことだ。

 しかし

 こういう時代が

 長く続くかな?

 いずれは

 落ち着くだろう」

「……」

「俺たちは

 その落ち着いた

 時代になって

 本当の仕事の

 できる人間に

 ならなくては

 いけないんじゃないのか?

 闇屋で

 今が良ければいい

 というのでは

 駄目だ」

「……」

「俺は

 今のように

 闇屋の世界に

 安住しているわけには

 いかない。

 いつか

 俺でなくては

 できない仕事を

 成し遂げる。

 そうしてこそ

 衣笠さんも

 喜んでくれるのだろう」

 

 

・ひとり

 戦場から

 生きて帰った

 猪狩の

 心の中には

 他人に言えない

 負い目があった。

 そして

 焼け野原の

 東京で

 健太、里江と知り合い、

 その後

 衣笠に

 拾われるようにして

 出会っている。

 戦後の

 荒廃した

 人心の中で

 衣笠だけは

 信じても良い人物と思い、

 力を合わせて

 仕事をしてきた。

 しかし

 その衣笠も

 逝ってしまった。

 猪狩は

 深い虚脱の中にあった。

 何かを

 なさねばならないのだが、

 皆目見当がつかなかった。

 

 自分ひとりで

 今の仕事を

 続けることは

 不可能だ。

 衣笠さんが

 いたから

 自分にも

 できたのだ。

 

 猪狩には

 新しい出発が

 必要であった。

 そのためには

 今ある

 すべてを

 ともかく

 投げ出そう

 というのであった。

 

 

「おやじさん……」

「なんだ」

「今日で

 一カ月になる……

 毎日毎日

 雨の日も

 風の火も

 街角に立って

 何をするわけでもない」

「いや

 やっているさ」

「え

 何をです?」

「人の流れ

 車の流れだよ」

「……?」

「健太

 覚えとけ

 何をするにも

 人だ。

 大勢の人間が

 どこを歩き

 どこで立ち止まり

 どこで何を買い

 どっちへ去っていくのか。

 それも

 朝、昼、晩、

 すべてが

 わからなくては

 だめだ。

 ひと月ぐらいで

 わかるほうが

 不思議なのだ」

「いったい

 何の仕事を?」

「流通だ」

「流通?」

「そうだ……

 人が

 流れていくように

 物を流す。

 俺は

 これからの仕事は

 何をやるにも

 流通を考えねば

 と思っている」

 

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「当然だよ。

 安いというのは

 それだけで

 説得力が

 あるもの

 なんだからな」

 

 

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