ひーぶろぐ。

読書していたときに心に触れた言葉を残しています。

ひょっぽこ読書記録No.14 (抜粋7箇所)『アンダー・ユア・ベッド』大石圭著

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 『アンダー・ユア・ベッド』

     大石圭 著

 

 

 

・この30年、

 何百という人々が

 僕の名を知り、

 僕の顔を知った。

 知ったはずだった。

 何百という人々が

 僕とすれ違い、

 言葉を交わした

 はずだった……。

 だが

 今、

 僕を覚えている人は、

 ほとんど

 いない。

 まして、

「三井は

 どうしているんだろう?」

 などと

 僕を

 思い起こす人は

 どこにも

 いない。

→きっと

 それで

 いいのだ。

 人生に起きた

 すべてのことや、

 そこで

 出会ったり

 すれ違ったりした

 すべての人を

 覚えていたら、

 煩わしくて

 しかたないだろうから。

→人は

 自分にとって

 必要なことだけを

 記憶し、

 そうでないものを

 忘れ去る。

→そして

 僕はー-

 いつも、

 忘れ去られる側に

 立っている。

 

 

・昔、

 どこかの国の

 王様が

 ある実験をさせた。

 それは、

 赤ん坊を

 人間と

 一切

 接触させずに

 育てたら

 どうなるか、

 という実験だった。

 人を見ることも、

 その体温に

 触れることもなく

 育てられた

 赤ん坊は、

 いったい

 どういうふうに

 成長し、

 どんな人間になるのか?

→国王の命を受けて

 国中から

 十数人の

 赤ん坊が

 集められ、

 それぞれが

 暖房のきいた

 個室に

 隔離された。

 そして、

 授乳や

 おしめの取り換えの時にも

 人間と

 決して

 接触しないような

 装置を使って

 育てられた。

→人と接触しないと、

 人間は

 どのように

 育つのか?

→実験は

 成功しなかった。

→実験の途中で

 すべての赤ん坊が

 死亡してしまった。

→飢えたわけでも、

 寒かったわけでも

 暑かったわけでも

 ないのに。

→人は

 人との

 接触なしには

 生きられない?

 

 

・かくれんぼうで

 忘れられ、

 遅くに帰宅しても

 家族が

 心配することもない。

 

 

「ごめん、

 あんたの

 お土産

 ないわ……

 あんたが

 いたってこと、

 コロッと

 忘れてた……

 あんた

 存在感

 ないから……」

 

 

・たぶん

 今、

 この瞬間にも、

 世界のどこかで、

 忘れ去られた者たちが

 死んでいく。

 チョコレートを

 口にしたことのない

 子供が。

 着飾ったことのない

 少女が。

 誕生を祝福されなかった

 少年が。

 誰かに

 必要とされたことのない

 老人が。

 ――

 町はずれの

 あばらやで、

 雑踏の傍らの

 ドブの中で、

 ショッピングセンタの裏の

 ゴミ捨て場で

 ――

 忘れられたまま、

 死んでいく。

→忘れられた者は

 忘れた者に

 復讐する

 権利がある。

 水島は

 忘れられた者の

 代表者だった。

 彼は

 忘れられた者の

 代表者として、

 忘れた者を

 殺したのだ。

 

 

「あんたを

 産んでよかった。

 あんたを

 妊娠した時、

 あんたの

 お父さんは、

 子供は、

 啓一郎ひとりで

 十分だって言って

 産むのを反対したの。

 下の子供ができたら

 啓一郎が

 かわいそうだって。

 あたしも

 そうかな

 って思ったけど。

 だけど、

 あたしは産むことにしたの」

「どうして産むことにしたの?」

「保険のつもり

 だったのかも。

 あんたを産んだのは、

 もし万一、

 啓一郎が

 死んでしまった時のための、

 予備のつもりだったのかも」

→保険?

 予備?

 母に

 そう言われたことが

 僕は

 嬉しい。

 たとえ

 保険であろうと、

 予備であろうと、

 母は

 今、

 僕を

 必要としている。

 

 

・啓一郎は、

 すべての人に

 愛された。

 きっと

 神様も

 啓一郎を、

 一刻も早く

 自分のそばに

 置きたいと

 望んだのだろう。

→神は

 兄を

 望んだ。

 だが、

 弟は

 望まなかった。